奈良県奈良市 小児歯科・一般・矯正・審美・インプラント・無痛治療の林小児歯科

耳よりアーカイブ 食育

苦しいときの カミだのみ

 ここでいうカミとは神でもカミさんでもなくて「噛み」なんです。みなさんは、重いものを持ち上げたり、力を入れようとするとき、歯はどうなっているかわかりますか?思わず噛みしめていますね。歯が接触しない状態と最大接触面積で噛んだ状態とでは、握力で平均20Kg以上の差が出ます。つらいときにがまんするのも、くいしばったほうががまんしやすいですよね。歯の治療は、痛くてもくいしばれないからいっそうつらいです。だから、当院では無痛治療をこころがけています

 

筋力低下が著しい

 最近はファーストフードやレトルトのような軟食化が進んでいます。こどもの時代に口をよく運動させないと、構造だけでなく機能的な問題も発生します。口の周囲の組織、特に筋肉の働きを忘れてはいけません。最近のこどもたちは、噛むための筋肉だけでなく、表情をつくる筋肉も、働きが乏しくなっていることが話題になっています。これが姿勢の悪さや疲れやすさにつながる可能性もあるのでは、と思っています。よく噛み、よく笑い、しゃべり、歌い、機能的に口を使って、健康に成長してほしいですね。

 

食育への関心度  

 2009年度版食育白書の調査結果が出ました。20歳以上の5千人調査で、小学生のときに、「1日3回、決まった時間に食事をしていたかどうか」「いただきます・ごちそうさま を言っていたか」の2つへの回答の(はい/いいえ)が、「食育への関心度のちがい」として大きく現れていることがわかりました。20歳以上の成人への調査ですから、この人たちの食育への意識は、子育てと関わってきます。いま小学生に規則正しい食事と食べることへの感謝を実行していくことは、その次の世代の子どもたちの健やかな成長の基盤としてとても大切だと痛感しました。

 

「食育」ご存知ですか?   

 最近「食育」という言葉を新聞や雑誌でよく見ますね。昔、林小児歯科で「歯科でも食育を」と皆さんにお話したころは、歯科界ではほとんど知られていない言葉でした。今では政府も食育推進会議を作り食育への取り組みをいろいろ検討しています。食育とは、心身の健康の増進と豊かな人間形成にとって「食」がいかに重要であるか理解し、どのようにしたら食生活を豊かにできるかを考え、実践できるように育児や教育をしていくことです。医療、教育、食物関係の専門家だけでなく、みんなが取り組んでいきたいことです。この耳寄り情報でも食育に関連することをいろいろお話していきたいと思います。

 

食育の歴史  

 食育は最初、「いただきます」の心を大切にしたいという教育活動+伝統ある食文化の継承が軽視されていること+安全な食品を求める消費者+生活習慣病の増加に危機感をもつ医療関係者、などの声が集まって少しずつ大きな声になっていったのだろうと思います。

国が、食育基本法という法律を制定したのは、この声に乗っかって、1、わが国の食料自給率の低下に歯止めをかけよう。2、糖尿病・がん・心臓病・脳卒中の費用で総額31兆円に膨らんだ医療費を抑制したい。という考えがあったのだと私は思います。歯科医療費は総医療費のたかだか10%以下ですが、食と健康を考え、予防に投資したほうが、削ってつめるよりもずっと医療費のムダ使いを減らせることを、小児歯科関係者は30年以上主張し続けてきたのです。

 

なぜいま食育    

 昭和の終わりごろから平成にかけて、日本の食生活は大きく変貌しました。スーパーやコンビニには調理済みの食品が豊富にならび、○○ドや○○ドに代表されるファストフード店が全国展開し、画一化されたメニューと味を手軽に安心?して食べられるようになりました。しかし便利さの代償に私たちは大切なものを失いかけています。またたくさんの問題も浮上してきました。生活習慣病の増加、サプリメント信仰、無理なダイエット、家族バラバラの孤食、などなど。キレる子・キレる大人の問題も実は、こういった食の問題が背景にあることも大いに考えられるのです。

 

食育 スローフード  

 ファストフードに対抗して「スローフード」という言葉が出てきています。消えつつあった日本の伝統食を見直し、ゆとりを持って食事を楽しもうという姿勢です。和食は、ヘルシーで、よく噛むと味わい深い料理が多いと思います。ゆっくり噛んで、楽しく食べれば、食べすぎが減り、消化器の負担が減り、歯も歯肉も顎もからだも健康になります。もし、よく噛みたいのに歯や歯肉に病気があったら、最初でつまづいているようなものです。健康の第一歩として、歯を大切にしましょう。

 

食育 家庭で楽しくスタート  

 NHKに「ひとりでできるもん」という番組ができたとき、制作側は「子どもに包丁なんて」など心配も多かったらしいですが、放送してみたら大人気になりました。子どもと一緒に調理をやってみれば、楽しくて、食の理解が深まります。手を動かして学ぶ機会が少なくなっていますから、もちろん勉強に使わない手はありません。算数(ものの量、容積、割り算・・)理科(加熱、沸騰、溶解・・)社会(食材の産地、気象、貿易・・)。そして、食事を作ってくれる方や食べ物を作ってくれる方への感謝の気持ちが生まれ、食べ物をムダにしなくなるでしょう。苦手な食べ物も自分で調理したらおいしく食べるようです。坂本弘子著「台所育児」もぜひお読みください。

 

自然の薬箱   

 昔から薬草をはじめ、伝統薬に使われてきた植物は5万~7万種あるそうです。ところが環境破壊と乱獲でそのうち1万5千種が絶滅の危機にあるといわれています。マラリヤの薬など開発途上国ではまだまだ無くてはならない薬もたくさんあります。私たちも、抗生剤や鎮痛剤その他の薬剤に頼りすぎることなく、病気に抵抗できる強い身体を作っていきたいものですから、今後きっと「自然の薬箱」は貴重なものとして見直されるのではないでしょうか。地球の健康は、私たちの健康といろいろな面で関係が深く、みんなで大切にしたいですね。

 

甘いぞ!代用糖   

 ムシ歯予防のためには、砂糖の摂取を工夫することがもっとも重要です。しかし、甘いという感覚は哺乳類にとって大きな快感であり子どものころから嗜好性のつきやすいものです。甘味物の摂取をコントロールすることは難しいため、甘味嗜好を満足させながら砂糖の摂取を制限して、肥満やムシ歯のリスクを下げる目的で開発されたのが代用糖です。代用糖というと、以前はパラチノースなど甘味が砂糖の40%程度のものが多かったですが、現在ではアセスルファムKなど甘味度が砂糖の約200倍のものも開発されています。アセスルファムKは、ダイエットコーラやゼロカロリー飲料などに使用されています。ゼロカロリーとかムシ歯にならないなどのうたい文句に油断して多用してしまい、小さいときに甘い物大好き習慣にならないようにしてください。

 

燃料タンクが小さい  

 おやつは大人にとっては楽しみやリラックスが主な目的ですね。でも、子どもたちは育ち盛りなのにお腹の容積が小さいので、おやつは三度の食事を補う大切な補助食です。お菓子に限定してしまわず、すぐにエネルギーにできる炭水化物を中心にして、砂糖・塩・油を摂り過ぎないような食物をおやつに選んであげてください。たとえば、おにぎりは手軽でひじき、切干大根、とろろ昆布などいろいろな具材を加えて、ヘルシーでかわいく演出して楽しめますのでオススメです。

 

丸のみはからだに悪いですよ    

 ヘビはカエルやニワトリの卵、ひよこなど自分の頭や体の太さよりずっと大きいものまでのみこんでしまいます。ニシキヘビがイノシシをのみこんで死んだ写真とミシシッピーワニをのみこんで破裂した写真を見たことがあります。ヘビは消化力がすぐれていて、唾液の段階から強い消化液を出し、胃液はさらに強く、丸のみしても数日で骨、皮、毛まで消化してしまいます。でも私たち人間は、しっかり噛まないと消化できません。岡山大学の岡崎先生の調査で、ヒトがビーフジャーキーを丸のみしたものと3回だけ噛んでのみ込んだものをウンチから取り出した写真があります。丸のみのほうはもとの形のまま消化されず、3回だけ噛んだものは半分以上形が残っていませんでした。ヘビのマネはしないでね。

 

楽しく食べられる時間

 食欲が維持できるのは、食べ始めてからおよそ30分です。最初に食べた食物が消化されて血糖値が上がるまでに約30分かかるからです。血糖値が上がってくると、食欲は抑えられてきます。もし「遊び食べ」「TV見ながら食べ」などで時間がかかってしまうと、十分な量の食物が摂れないことになるので、食事に集中できるようにしましょう。逆に早食いの場合は、食欲が抑制されるまでに過剰につめこんでしまうので、やはり食事に集中し、よく噛んで食べるようにしたほうがいいですね。

 

  • 2017/04/24
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