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ナルホド・ナットク

マイナス1歳から赤ちゃん歯科

ゼロ歳からのスタートよりも早く

子どもの歯の健康をそだてていくのは、いつからはじめるのが良いでしょうか?
生まれる前、おなかにできたら、さっそく生まれてくる子のお口の健康づくりのスタートです。

産まれてすぐからのアゴ育て

深のみ・浅のみ

あごの発達、口腔機能の発達に良いおっぱいの飲み方は「深のみ」です。口いっぱいに乳首をほおばって、舌で前後にしごくように飲むのです。くちびるだけで浅く吸いついて飲むのは良くないのみかたです。哺乳瓶の乳首の穴を大きくしたとき、浅のみになりやすく、あごも舌も動きがとぼしくなります。

授乳時の抱き方で変わる

最近、猫背など姿勢の悪い子、すぐ座り込む子、便秘がちの子など、いろいろ気になる子どもたちのことが話題になっています。もしかすると、おっぱいをあげるときの抱っこのしかたが分かれ道だったのかも。抱っこするお母さんの姿勢も良くなくて、そのせいで、ひょっとしたら抱かれているあかちゃんにとって心地よいものではない態勢で飲むのをしいられているかもしれません。歯科的には、アゴの成長や口の動きに関係してきます。

縦抱き
まだ首がすわっていない段階なので、やわらかく不安定な背骨や弱いところへ、頭の重さがのしかかります。

首がうしろにダラン
頭はとても重いのです。首の骨も呼吸筋など胸の筋肉も、口の周りの筋肉も負担がかかりすぎ、動きも制限されます。

初めて口に入れる食べ物は?

離乳の手順として言われているのは、「まず舌でつぶせるもの」ついで「歯ぐきでつぶせるかたさ」・・・というもので、よく知られていますね。でも、その前に、与えたらとてもいいことがある、おすすめの食材があります。
それを見つけるには、発想を大きく変えてください。
「食べようとしても、飲み込めないもの」干したタコや昆布、干し大根などなど。歯のない口で「アグアグ・ガチガチ」いろんな握り方をしていろんな角度で、口に入れていきます。ちぎれない、のみこめない、味が出てくる、長くてにぎれる。唾液でビチャビチャになってもひるまないで。もし、ウンチに混じって未消化の固形物が出てきても、心配はいりません。


舌の動きの発達

母乳を与え始めた頃の赤ちゃんは、生まれつき備わった動きで、口の中に取り込んだ乳首を上顎と舌ではさみ、舌を前後に動かしながらしごくようにして母乳を吸います。離乳期に入ると、舌と上顎の口蓋(鼻の床下の部分)で軟らかい食べ物をおしつぶし、のどのほうへ送って飲み込みます。
やがて臼歯がはえるより少し前の時期に、舌を横に動かせるようになり、食べ物を歯肉の上まで運んで上下の歯肉でおしつぶす、カミカミの動きになります。離乳食を口にいれても、はじめは舌で押し出してしまうのは、舌の横の動きがまだ上手ではないからです。こうして上手に食べられる舌の動きは、やがて言葉をしゃべるときの複雑な動きへと成熟していきます。

赤ちゃんの歯そだて

歯のたね

赤ちゃんの乳歯のたね(歯胚)は、すでにおなかの中にいるとき、妊娠6~7週の初期からできはじめています。体長12ミリ、体重4g(1円玉4枚分!)で、超音波ではじめて心臓の動きが確認できたあの感動の瞬間には、すでに乳歯ができてきているのです。妊娠4ヶ月ごろからはその歯胚が石灰化してきてエナメル質が形成されます。そのころ、6歳臼歯(永久歯)の歯胚もできてきます。
あかちゃんの栄養にまわる分はお母さんの身体からあげることになるので、お母さんの健康、あかちゃんの発育、あかちゃんの歯そだてのために、適切な栄養をとってください。

歯みがきの準備とスタート

あかちゃんに歯が生えてきたらいよいよ歯みがきのスタートですね。1歳になったころ、上の前歯が4本ならんだくらいから、歯みがきをスタートさせてください。下の前歯をみがき、次に上の歯をみがいてください。上の歯をみがくときは、上唇小帯という唇の中央の粘膜が引っ張られているところをハブラシでひっかけないよう、指でガードしてください。
はじめてのハブラシでいやがられたりびっくりされたりしないように、もっと小さいときにお風呂などで、口の中に指をいれて歯肉や頬にさわって慣れさせておくと効果的です。

妊婦さんと砂糖

妊婦さんの食べた砂糖がおなかの赤ちゃんに影響を及ぼすことをご存知ですか?女性の子宮の形や大きさは砂糖によって抑制され、性周期も乱れ、卵巣にも影響があるという説があります。おなかの赤ちゃんの発育や頭蓋骨の大きさ、胎児の脳水腫などと砂糖の大量摂取に関連があるという疑いもあるそうです。甘い物好きの女性に排卵が起こらない割合が増えているという調査もあります。神経質になることはありませんが、砂糖のとりすぎに注意して良い食生活をこころがけてください。

子どもを産むと
歯を1本失う??

おなかの赤ちゃんがお母さんの歯からカルシウムをうばうというのは俗説で、そんなことはありません。でも出産を境に歯が悪くなったと聞くことはしばしばあります。妊娠中はムシ歯の危険がいっぱいなのです。つわりで口を清潔に保ちにくい、食事回数が増える、唾液分泌が減る、唾液の中和する力(唾液緩衝能)が低下するなどの問題があります。その上、妊娠中も授乳中も歯科へ通うのが大変です。
でも、お母さんの口を健康に保つことは、これから歯がはえてくる乳児のムシ歯予防に大きなカギとなります。定期的な歯科での健康管理を忘れないようにしてください。

妊娠中の口腔ケア

妊娠中にムシ歯が増えた、という話はよく耳にします。昔は胎児にカルシウムをとられるからなどと言われましたが、そうではありません。じつはつわりのせいです。つわりの時は食事が不規則になってしまい、間食も増えがちになります。歯ブラシを奥に入れると気持ちが悪いので、なかなかきれいにできません。そして胃液の逆流で、口の中が酸性になり、ムシ歯菌が増えやすい環境になってしまいます。少しコンパクトな歯ブラシを選び、短時間で回数を分けて磨く、苦しい箇所は少しうつむきかげんで歯ブラシを当てるなど、歯磨きを工夫してみてください。安定期には定期健診をうけましょう。お母さんのお口の状態の良し悪しは、赤ちゃんのお口の健康に大きな影響をもっていますので、口腔ケアをがんばってくださいね。

はえたてがキケン!

かわいい歯が歯肉から顔を出したのを見つけるのはうれしいものです。実はこのときが一番、ムシ歯になる危険性が高い時期です。理由の1は、歯がはえてから、まだ少しずつ硬くなることです。唾液の成分が貢献しているようです。理由の2は、かみ合えば自然に汚れが取れるところが、噛んでいないときれいにならないことです。理由の3は、歯肉がかぶっているところに汚れがたまったままになりやすいからです。

よい歯をつくる食べ物

あかちゃんが生まれたばかりのころから、顎の骨の中で永久歯が形成されはじめます。永久歯がはえてくるまでの期間、乳歯で栄養をとって永久歯を育てているのです。歯に良い食べ物は身体にも良いので、一生使う永久歯を良い歯に育て、元気な全身を育てるために、できるだけ偏らずなんでもしっかり食べてください。日本人はカルシウムが不足しがちだと言われています。リンは、インスタントラーメンや食品添加物に多く含まれ、とりすぎるとカルシウム不足につながるおそれがあります。気をつけましょう。

強い歯、弱い歯

なぜムシ歯になったのかな?歯が弱かったからかしら?・・そんな声を時々耳にします。でも、歯の強い、弱いは、個人個人で決まっているのではないのです。歯がはえてからの時期によって歯の強さは変化します。乳歯も永久歯も、はえたばかりはとても弱くてムシ歯になりやすい状態です。そして、唾液にさらされ、ものを食べるのに使われながら、だんだん強くなっていくのです。
ただ、口の中が酸性に傾くような状態が長いと、強くなりにくくてソンです。ダラダラ食いで砂糖がしょっちゅう歯の表面を汚している時や、唾液の機能のひとつ、口の中を中性にする「緩衝作用」が、唾液の減少で働きにくい時、特殊な例では、胃液がよく逆流する場合や工場で酸を使う環境などでは、口の中が酸性に傾いています。砂糖の入っていない食物をよく噛んで、唾液もよく出れば、どんどん歯が強くなりますよ。

ムシ歯って遺伝するの?

「虫歯は遺伝するのですか」という質問を受けますが、虫歯は後天的なもので、遺伝するようなものではありません。歯の形態、とくに溝の深さなどは多分に両親の遺伝的影響を受けていると考えられます。また、歯の大きさや顎の骨の骨格的特徴も遺伝します。その影響で子供の歯並びが悪くなると歯磨きもしにくく、虫歯が出来やすいということがあります。お母さんもお子さんもムシ歯が多いと、私の遺伝かしら?と思ってしまいがちですが、家族の食生活が原因と考えられます。
また、離乳食を食べ始めるころまでに、お母さんはご自分のムシ歯と歯周病を診てもらい口の中を清潔に保っていただくことを強くおすすめします。忙しい時期ですが、お子さんのために大切なことですのでお時間をつくってくださいね。

歯みがきとムシ歯は関係ない

意外に思われるかもしれませんが、歯みがきの上手下手とムシ歯の発生は、臨床的には関係しません。
何人もの、小児歯科の臨床を何十年やってきたという先生方が、共通してそう思っています。歯みがきがムダだというのではありません。ついでに言うと、「歯の強い・弱い」も関係ありません。もっともっと、ムシ歯の発生に影響することがあるのです。
それは、どんなものを、どんなふうに食べたか、という食生活です。
砂糖の入った食品の食べ方が一番大きなカギです。次いで、3度の食事をちゃんと食べているか。そして、良く噛める、唾液が良く出る、食べるだけで歯を清掃してくれるなどの歯に良い食品の選択です。歯周病も、歯に良い食品と規則正しい生活は大切です。

いつごろ離乳食を始めればいいの?

あかちゃんが、お母さんの食べている口元をまじまじと見ていませんか?
食べることに興味を持ち始めたのは、食べる意欲が育ってきたということです。サルでは母親の食べるのを子ザルが見て、安全に食べることのできるものかどうか、どの場所で手に入るのか、などを学習しています。お乳だけで栄養をとっているときより、くっついている時間が少なくなって、外界へと活動範囲を拡げていきます。ヒトも、食べ物に興味を持つことはとても重要な意味を持っているわけです。このときが、離乳のスタート時期だと思います。チェックポイントはあと二つあります。
二つ目:しっかりお座りできていますか。食べ物を口の近くに持って行ったら、口を近づけようとしますか?ずっと背もたれにもたれたまま動かないのであれば、もう少し待ったほうがいいです。
三つ目:目と手と口が、ちゃんと協調していますか。もっと小さいころ、片手で握って振っていたおもちゃを、やがて目の前でもう片方の手に持ち替えて遊びだします。食べるときは、目で見てつかんで口に持っていく、一連の動きができてきたかな?バラバラに動いていないかな?
この三つを見てください。

むし歯はうつるのか?

ムシ歯は他の人から伝染る?
ムシ歯は母から子へ「うつる」ものなのか?

ワタシが食べていて、じっと興味をもって見ていたから、ついあげちゃった。どうしよう(涙)
そんな心配はいりません。興味をもったものを一緒に食べるのは赤ちゃんの世界がもう一つひろがった、うれしいこと。スキンシップを犠牲にした神経質な警戒は子育てをトータルでみたときに、マイナスです。
お母さんからもらっていいのです。(たまに保育園でお友達からもらう子も・・・)

安心して、接することができるように、お母さんのお口を良い状態にしておきましょう。

口の進化

どうして口は一つなのでしょう?手足も目や耳も二つあるのに。
これは、進化のなかに答えがあると思います。以下に、口の進化について記事を書きました。その中に答えがありますでの、読んでみてください。
口の進化は、動物の繁栄と絶滅のカギをにぎっています。知れば知るほど面白いのが、口の進化です。

口の役目

大学生の時、生理学の河村洋二郎教授が「人間の口の役目を考えられるだけあげなさい」と私たちに質問しました。「それだけかな?」「もうないかな?」とうとう、黒板がいっぱいになりました。生き物全体だとさらに多くなります。
人間と似た使い方や、独特な使い方、それぞれ生き残るために口は進化して色々な活躍をしています。戦う、求愛する、傷を治す、人間の手の代わり、もちろんコミュニケーションにも。どうしてこんな口に進化したんだろう?と考えてみるのはとても面白いと思います。

アゴの進化で強者に

ヤツメウナギはアゴがありません。吸盤のような口で無顎類といいます。魚類の祖先は最初、無額類ばかりでした。4億数千年前のシルル紀に、下顎を持つ魚類が現れました。顎を持つことで獲物に噛みつくことができるようになり、それまでは生態系の弱者としてオウムガイやウミサソリなどの餌食になっていたものが、その後のデボン紀で強者にのぼり魚類の黄金時代となりました。
これを顎口類といい、我々のよく知っている魚類です。ヤツメウナギはウナギでないどころかサカナですらなく、無顎類はほとんど絶滅してしまい、現代まで生き残っているのはヤツメウナギとヌタウナギだけです。

歯が弱くて絶滅

野生動物は歯が悪くなると生きていけません。実は長い地球の歴史の中では、歯が原因で種ごと絶滅した生き物があります。それはカンブリア紀、ほとんどの生き物が10㎝程度だった時代に1mもの体長がありました。ぬいぐるみも出ていて恐竜に興味がある人はご存知でしょう。「アノマロカリス」といいます。三葉虫を食べていました。
ところが、三葉虫は進化してかたいカラを持つようになりました。アノマロカリスはかたいカラをかめなくて、絶滅したそうです。

口の周りで進化がすすむ

アゴの骨はエラが変化してできました。アゴが動くためには関節が必要です。関節はとても複雑な組織で、骨端軟骨、じん帯が取り巻いて滑駅で満たされた袋のような関節包が必要です。進化の過程では、噛む力を制御するために三叉神経も発達しました。
ものを食べるために、アゴの周辺に感覚神経、運動神経が集中して視覚や聴覚、嗅覚が発達しました。哺乳類では耳には顎の骨が変化して耳小骨ができました。音は水中ではよく聞こえますが陸に上がったため聞こえにくくなった音を聞き取るために進化したのです。

恐竜の王者

ティラノサウルスは恐竜の中の王者でしょう。体重は同じ肉食獣のアロサウルスが1.7トンなのに比べ、6トンもあります。噛む力がものすごく、57000N(ニュートン)と算出されます。アロサウルスは8000N。現存する動物で最強はイリエワニで16000N。ライオンが3800N。(サ)現代人は男性が700N女性が500Nくらいです。ニュートンは力の単位ですが、9.8で割った数字が「重さ」質量の単位「Kg」とイメージしてください。

口が進化の中心(1)

植物は自分で栄養をつくりますが、動物は栄養を他からとります。5億年以上前、多細胞生物の表面にへこみがあらわれて、そこから食べ物を取り込むようになり、これが口になりました。手足目耳鼻よりも、最初にできたのは口です。小学生の講話で「どうして口は一つなの?手足も目や耳も二つあるのに。トンチじゃないよ」という質問をすると、色々ユニークな答えが返ってきて楽しく講話がすすみます。
これは、進化のなかに答えがあると思います。

口が進化の中心(2)

動物には最初に口ができました。口から食べ物を入れて養分をとったら、袋やコップのように同じくそこから出します。やがて、口と肛門が別になりその連絡通路が1本の管で、消化管となりました。
さらに、消化できるかどうかを見極めるために、管にそって神経管ができました。神経管は、口の近くでふくらんで脳になり、食べ物を取り入れるのに都合よく進化しました。同じように食べ物をとるのに有効な、目などの感覚器と手足ができたのです。口から食べるために、動物は進化してきたと言えるでしょう。

進化か退化か

ヒトがサルと分かれたころのお話。ヒトはどんどん脳重量が増えていきました。脳が大きくなるためには、頭蓋骨が外に拡張しなければなりません。それまでの食物はとても硬く、強大な噛む力が必要だったため、頭の筋肉は分厚く強いものでした。実はこれが頭蓋骨を外から締め付けているため、脳は大きくなれなかったのです。
ヒトが火を使い調理して柔らかくて栄養豊富な食物を得られるようになり、頭の筋肉が小さくなったので、脳が大きくなれたのです。
じゃあ、軟らかいものばかり食べて頭を良くしようって?だめです。現代は、軟食が進みすぎて、噛まないことが脳にも悪影響をもつようになっています。

口はせまくなり続けている

古墳時代以降の日本人の顔は徐々に華奢になってきています。一回の食事で噛む回数は弥生時代3900回にくらべ現代では600回に減っています。特に戦後の食物形態の変化から、歯ならびが急速に悪くなり、いびきや睡眠時無呼吸をおこし、鼻づまりしやすくなってきています。頭の筋肉は噛むためにも重要な筋肉で、これが頭の位置や姿勢を制御するので、よく噛まないと背中がグニャグニャしたり身体がゆがんだり疲れやすくなったり、口ポカンと相互に悪影響を及ぼしあったりするのです。

魚と両生類の舌

魚にも舌はあります。味覚は鋭くヒトの1万倍あるものもいます。ただし、動きません。水の流れで味は舌を動かさなくてもわかるのです。
魚が陸に上がって両生類に進化したとき、口をあけて食べ物が入ってくるのを待っているのではなく、つかまえる必要があります。両生類のカエルは舌を動かして獲物を捕らえることにしました。カエルが長い舌を出す速さは秒速4000m、0.07秒で獲物を捕らえます。爬虫類のカメレオンは体の2倍の長さの舌を重力の264倍のすごい加速度で発射します。

頬と口唇

哺乳類はお乳を飲みます。口の中を陰圧にして吸うために欠かせないのが口唇と頬です。
そして、これは咀嚼するときも活躍しています。歯だけが食物を噛んでいるのではなく、歯に常に当たるように、舌と口唇、頬がうまく動いて食物をまとめ、上下の歯の間に押し込んでいるのです。バレーボールのレシーブ・トス・スパイクの連携のようです。餅つきの「合いの手」はうまく連動していて、杵で手をたたかれませんね。もし頬や舌をしょっちゅう咬んでしまうようなら口腔機能の低下かもしれません。

脳性麻痺児が教えてくれた

口腔機能の低下は、全身の運動と認知の機能低下につながるものです。進化に逆行するように、滑舌低下、頬や口唇をうまく使えない、首が回らない(両生類)舌がうごかない(魚類)・・・口腔と全身の動きは関連が強いのです。
「食事の時、姿勢を正して足の裏を床に着けてね」というのは、私が40年前に脳性麻痺児のリハビリから学んだことです。スピーチ訓練では食べ物が教科書でした。首の位置を変えると姿勢全体が変化して、爬虫類の歩行に類似した動きになってしまう反射も見ました。口の筋肉で歯ならびが変化することも脳性麻痺の患者さん達が気づかせてくれました。このような視点を教わった患者さんたちに感謝しています。

口の中にすむ悪いやつら

あなたの口の中には、いろいろな細菌が棲んでいます。
ちょっとのぞいてみましょう。
敵を知れば、戦い方がわかるのです。

ウイルス感染症との関係

20世紀初めのスペイン風邪パンデミックでは、お口の病気のある/なしで感染に差があったことが記録されています。口腔細菌には、ウイルスが身体に入り込むのを助けるものがあります。細菌の産生するプロテアーゼ、ノイラミニダーゼなどによりウイルスに感染させやすくしているのです。
また細菌の産生する酵素でウイルスの増殖を助ける場合もあります。さらに、細菌の内毒素は炎症を起こして歯周病を進行させますが、粘膜上皮の炎症でウイルスが侵入しやすくなります。80歳前後の方を口腔ケアありとなし約100人ずつで比較したところ、口腔ケアありとなしでインフルエンザ発生に約10倍差があったという報告がされています。

抗ウイルス薬を
効きにくくする

タミフル、リレンザなどの抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスに直接作用するのではなく、ノイラミニダーゼのはたらきを抑え、インフルエンザウイルスを細胞内に閉じ込めることで感染が広がるのを防ぐ薬剤です。せっかく抗ウイルス薬がウイルスのノイラミニダーゼ活性を抑えようとしているのに、口腔細菌が産生するノイラミニダーゼが代わりにその働きをしてしまうので、薬を服用しているのに効果が少なくなってしまうのです。

ストレスをまっている

ストレスは唾液を減少させるので、唾液によるムシ歯と歯周病の防御が働きにくくなります。その上、歯周病菌は人間のストレスを上手に利用する、なんとも悪賢い能力を持っていることがわかりました。歯周病菌のなかでも最も悪いPジンジバリスの培養液に、ストレスホルモンを加えたところ、タンパク分解、ジンジパイン酵素産生が高まりました。つまり、ストレスホルモンを利用して病原性を高め、歯周病をより悪化させるのです。

妊婦さんご注意!!
胎盤通過

歯周病菌は胎盤を通過しておなかの赤ちゃんの成長に悪影響を与えたり子宮の異常収縮をおこします。動物実験で歯周病菌に感染させると、胎盤や胎児へ伝播して発育不全や死産がおこることが認められています。
ヒトでも切迫早産と診断された妊婦の口には歯周病三大悪玉菌の一つT.フォーサイシアがたくさんいました。また別の調査では、最強の歯周病菌P.ジンジバリスが切迫早産の妊婦の羊水から30%も検出されています。ヒトでの統計では早産に対する危険率は2.27倍、低体重児出産に対する危険率は4.03倍もあるそうです。

早産、低体重児出産

歯周病菌が早産、低体重児出産を引き起こすメカニズムは2つ考えられています。 1、炎症性物質の上昇 :歯周病ではIL-1、TNF-α、PGE2等の炎症性物質が上昇します。これらの分子の多くは分娩に関わる因子なので、早期に頸管熟化と子宮収縮が引き起こされます。 2. 産科器官への歯周病菌感染 :歯周病菌が血中に入り、産科器官にまで達し、感染が起こることにより、早産・低体重児出産が引き起こされます。

心臓血管系疾患

歯垢はプラークといいますね。血管の内面にもプラークと呼ばれるものがあります。動脈硬化をおこすドロドロの脂質沈着物です。ウサギの実験とマウスの実験で、歯周病菌P.ジンジバリスを口に感染させると血管のプラーク形成が進行することがわかっています。心臓の手術をうけた人の血管壁からはP.ジンジバリスが25%も検出されました。血清中のP. ジンジバリス抗体価により脳卒中のリスクを予想できるとの報告もあります。歯周病の重症度をみれば脳卒中のリスクがわかるほどに、歯周病と心臓血管系の病気の関連は高いのです。
そして、歯周病の治療をしっかり行うことで、心冠状動脈疾患のリスク低下や頸動脈の肥厚の減少などの効果が示されています。

ピロリ菌抗体

ピロリ菌は胃の中に生息し、日本人では6000万人が感染しているそうです。ピロリ菌は胃や十二指腸の炎症やがんだけでなく血小板数が低下する血液疾患である特発性血小板減少性紫斑病と因果関係があることが判明しました。口腔細菌のカンピロバクター.レクタスはピロリ菌と共通する抗原を持っています。
これらの抗原によって、歯肉にも胃粘膜にも免疫複合物が形成され、アレルギー反応が起こることが指摘されています。ピロリ菌除菌治療では、口腔細菌のバランスをくずしてしまう危険性が考えられるので、日和見感染予防のために、プロケアとホームケア両方の口腔ケアが重要です。

肺炎

肺炎による死亡は、一日300人以上といわれています。その9割以上が65歳以上で肺炎の多くは誤嚥性肺炎とよばれるものです。高齢者では、嚥下反射と咳反射の衰えから口腔細菌が唾液に混じって気道に入り込むことで、誤嚥性肺炎がおこります。肺炎から分離される最も多い細菌は口腔細菌であることがわかっています。口腔ケアをしていた病棟としていなかった病棟で肺炎発症率に大きな差があったという報告をはじめ各地で口腔ケアの成果が認められています。おそらく新型コロナ肺炎の重症化にも大きな関連があるでしょう。

善玉菌かと思いきや・・・

バイオフィルムをつくる細菌のストレプトコッカス・サンギヌスはお口の中では破傷風菌、大腸菌の口腔への定着を阻止する働きを持っています。ところが、血管に入ると、菌血症、細菌性心内膜炎を引き起こします。また口の中にいるふだんは無害な肺炎桿菌が、腸で増えると腸に慢性の炎症が起きて、潰瘍性大腸炎やクーロン病といった難病を引き起こす可能性があることも報告されています。

ミュータンスと脳出血

国立循環器病研究センター、京都府立医科大学、阪大歯学部の野村准教授、仲野教授らの共同研究で、ミュータンス菌のある種が、脳内で炎症を引き起こし脳出血の発症に関与することを明らかにしました。
この種のミュータンス菌が唾液中から検出された患者では、そうでない患者と比較して脳出血を発症している割合が高く、さらに脳のMRI画像で観察できる微小な脳出血の跡も多いことが明らかになりました。脳出血の新たな予防の道がひらけるかもしれません。

口腔細菌と腸内細菌

口腔の細菌は500種~700種、口腔ケアが出来ている人で2000億、口腔ケアがちゃんと出来ていない人は6000億以上います。腸内細菌は700~1000種、500兆~1000兆います。口腔の方がせまいので細菌の密度つまり同じ面積あたりの菌数はほぼ同じくらいです。口腔内細菌と腸内細菌の大きな違いは、口腔内細菌がデンタルプラークをつくることです。
口腔内細菌は凝集して粘着する力が強く、いろいろな食物を噛む硬い歯の表面にも付着して棲むことができます。もし腸内細菌にこんな力があったら腸の中に大きなかたまりがいっぱいできてしまうかもしれませんね。

細菌と砂糖

腸内細菌はどんな食べ物をよく食べているかによって組成がかわって健康に影響します。口腔内細菌も同様に、食生活が細菌の組成を変化させます。砂糖の入った物を食べる回数が多いほど、ムシ歯になりやすくなります。その理由は、砂糖がしょっちゅう口に入ってくると、ムシ歯に関係する細菌は歯に粘着し、増殖し、酸を産生することができるからです。
増殖している菌数を減らす口腔清掃も大切ですが、粘着、増殖、酸産生のプロセスすべてに影響する、食生活を良くしていくことがとても重要です。

歯科から食育を

私たちは、子ども達がムシ歯などの口の病気にならなければそれでいい、と思っているわけではありません。歯磨きが上手になることが目標でもありません。口が健康に育つことで、すばらしい人生の基礎ができると思っています。
健康なお口を作るために、そして口が活躍することで全身が健康になるために、「食べること」をしっかり考えていくのが大切なのです。

SOSフードをご存じですか?

知りませんよね。
林小児歯科がこの言葉を作りました。

【SOSフードとは】

  • S:SALT 塩
  • O:OIL 油
  • S:SUGAR 砂糖

で身体にSOS!!

なぜいま食育

昭和の終わりごろから平成にかけて、日本の食生活は大きく変貌しました。スーパーやコンビニには調理済みの食品が豊富にならび、○○ドや○○ドに代表されるファストフード店が全国展開し、画一化されたメニューと味を手軽に安心?して食べられるようになりました。しかし便利さの代償に私たちは大切なものを失いかけています。
また、たくさんの問題も浮上してきました。生活習慣病の増加、サプリメント信仰、無理なダイエット、家族バラバラの孤食、などなど。キレる子・キレる大人の問題も実は、こういった食の問題が背景にあることも大いに考えられるのです。

食への感謝

江戸時代に貝原益軒の著した『養生訓』のなかに「五思」というくだりがあります。五思とは第一に、その食べ物は誰が下さったのかを思わねばならない。そして、その慈しみを忘れてはならない。第二には、この食べ物は、あなたの為に「誰か」が骨を折って作りだしたものであることを思い、心から感謝しなければならない。第三は、その美味しさを喜び、じっくりと味わって幸せに思うこと事である。第四には、今、健康で食べられる事を幸せに思わなければならない。
そして第五は、先人の智恵に感謝しなくてはならない。食材を火で調理する事を考え、様々な食べ方を編み出してくれ、大切に保存する方法を後世に遺してくれた。現代でも決して忘れてはならない考え方ですね。

食育
家庭で楽しくスタート

NHKに「ひとりでできるもん」という番組ができたとき、制作側は「子どもに包丁なんて」など心配も多かったらしいですが、放送してみたら大人気になりました。子どもと一緒に調理をやってみれば、楽しくて、食の理解が深まります。手を動かして学ぶ機会が少なくなっていますから、もちろん勉強に使わない手はありません。算数(ものの量、容積、割り算・・)理科(加熱、沸騰、溶解・・)社会(食材の産地、気象、貿易・・)。
そして、食事を作ってくれる方や食べ物を作ってくれる方への感謝の気持ちが生まれ、食べ物をムダにしなくなるでしょう。苦手な食べ物も自分で調理したらおいしく食べるようです。

食育
スローフード

ファストフードに対抗して「スローフード」という言葉が出てきています。消えつつあった日本の伝統食を見直し、ゆとりを持って食事を楽しもうという姿勢です。和食は、ヘルシーで、よく噛むと味わい深い料理が多いと思います。ゆっくり噛んで、楽しく食べれば、食べすぎが減り、消化器の負担が減り、歯も歯肉も顎もからだも健康になります。
もし、よく噛みたいのに歯や歯肉に病気があったら、最初でつまづいているようなものです。健康の第一歩として、歯を大切にしましょう。

食育の歴史

食育は最初、「いただきます」の心を大切にしたいという教育活動+伝統ある食文化の継承が軽視されていること+安全な食品を求める消費者+生活習慣病の増加に危機感をもつ医療関係者、などの声が集まって少しずつ大きな声になっていったのだろうと思います。
国が、食育基本法という法律を制定したのは、この声に乗っかって、
1、わが国の食料自給率の低下に歯止めをかけよう。
2、糖尿病・がん・心臓病・脳卒中の費用で総額31兆円に膨らんだ医療費を抑制したい。という考えがあったのだと私は思います。歯科医療費は総医療費のたかだか10%以下ですが、食と健康を考え、予防に投資したほうが、削ってつめるよりもずっと医療費のムダ使いを減らせることを、小児歯科関係者は30年以上主張し続けてきたのです。

「栄養素所要量」より
「楽しさ所要量」

食が細い子は、十分に栄養がとれないのでは、と心配になることがあるかと思います。発育期にはエネルギー源ばかりでなく、肉体を育てるさまざまな栄養素を十分に摂取する必要があります。しかし、小さな身体では成人と同じ速度で同じ量を食べられるはずも無く、食欲の程度もさまざまです。食べることや噛むことを強要しすぎると楽しいはずの食事が不快の対象になり食べることに興味を失ってしまいます。食べる楽しみは子どもの心と身体を養う大切な学習の機会なのです。日常の身体活動や間食の与え方、生活習慣に気をつけながら、楽しい食事になっているかな、を忘れず食べさせてあげてください。

マゴワヤサシイ

「マゴワヤサシイ」をご存知ですか?
まめ、ごま、わかめ(海藻)、やさい、さかな、しいたけ(きのこ)、いも、身体にとても良いものばかりです。それぞれの食材に含まれているのは、豆:豊富なタンパク質。ごま:ミネラル、食物繊維、ビタミン。わかめ:ミネラル、ビタミン、食物繊維。野菜:ビタミン、食物繊維。さかな:DHA、EPA、タンパク質、鉄分。しいたけ:ビタミンB群、食物繊維。いも:炭水化物、ビタミンC、カリウム、食物繊維。効果は、生活習慣病、コレステロールダウン、老化予防、抵抗力強化、疲労回復などなど。そして、よく噛めて、唾液が出て、歯を守り健康にしていくためにも、とても有効な食物ですね。「歯に良いものは身体にも良い」の代表です。

おいしさを噛みしめる

おいしさを感じるのは、味の刺激に反応し脳へ伝える舌やのどの粘膜にある味蕾です。これはよく知られていますが、おいしさの重要な要素なのが、歯ざわりや噛みごたえです。この感覚は歯の表面ではなく、歯と歯をささえる歯槽骨の間をつなぐ歯根膜の神経が支配しています。歯が抜けてしまうと歯根膜も無くなるので、入れ歯では噛み心地の微妙な感覚は受け取ることができません。おいしさを十分感じて食べることを楽しむために、自分の歯を一生使えるようにしたいですね。

ジャンクフードに
蝕まれないで

日本の食生活は「欧米に右へならえ」という変化をしてきています。今や欧米で深刻な健康被害をもたらしているジャンクフードは子どものまわりにあふれています。子どもは汗っかきで、水分を多くほしがります。しかし、そのとき清涼飲料水でないといけないのでしょうか?海外では安全な水が手に入りにくい地域が多く、清涼飲料水が手放せない事情がありますが、日本はちがいます。砂糖、香料、着色料などを含まない、お茶や水で水分補給は簡単にできるのです。脂肪分が30%を超える食品を人間は好む傾向があるそうです。子どもの時期からファストフード店やファミレスで出される食品に偏った食生活が定着してしまうのは、避けたいものです。欧米で和食が健康食として有力視されている、その本家本元として、日本に根付いてきた食事を子どもにちゃんと受け継いでいってほしいと思います。

スポーツドリンクと
経口補水液

脱水の予防と治療には、経口補水液というものを使います。スポーツドリンクはこの代わりになるでしょうか? 経口補水液は、WHO規格で、ブドウ糖2%、Na75mEq/l、K 20mEq/lで、点滴に似た、水分と電解質の吸収効果があるように作られています。スポーツドリンクは、ブドウ糖 6%・・・3倍! Na 21mEq/l・・少ない! K 5mEq/l・・・少ない! です。これでは、身体が吸収できる水分量は1/5程度となってしまいます。つまり、スポーツドリンクでは経口補水液の役目はできず、ただの清涼飲料水にすぎないことがわかります。

飲み物の砂糖

皆さんはペットボトル飲料(500ml)に含まれている糖分の量をご存知ですか?喫茶店に置いてあるペットシュガー1本は3gです。紅茶飲料で、ペットシュガー5本分の砂糖が含まれています。スポーツドリンクで8本、サイダーで11本分です。そして、カルピスなどの乳酸飲料やコーラ、オレンジジュースだと、なんと15~20本分の砂糖が含まれているのです。注意していただきたいのは、成分表示に書いてあるのは「100mlあたり」です。これだけ多量の砂糖が入っていても、冷やしてある、酸味がある、炭酸が含まれている、などで甘みに気づかずに飲んでしまうのです。夏場も、暖房のきいた冬も、運動の時も、これらを飲む習慣は要注意です。

子供の脳と血糖値
~ペットボトル症候群

私達の脳は体重の2%程度しかないのに、全エネルギーの18%も消費する大食漢の臓器です。脳はブドウ糖のみをエネルギー源にしています。ご飯のような粒食の場合は消化吸収が遅いので、血糖値(血液中のブドウ糖)は緩やかに上昇し、緩やかに落ちます。ところが、ブドウ糖を甘いお菓子や清涼飲料水、イオン飲料(スポーツドリンク)などで摂ると血糖値が急激に上昇し、急激に下がります。急速な血糖値の変動を繰り返していると、「ペットボトル症候群」と呼ばれる症状になる恐れがあります。考えることも、記憶することも、集中することもできません。イライラしてキレやすくなります。ひどい場合は意識喪失で倒れることもあります。のどがかわいたら、お茶、お水にしましょう。

甘いぞ!代用糖

ムシ歯予防のためには、砂糖の摂取を工夫することがもっとも重要です。しかし、甘いという感覚は哺乳類にとって大きな快感であり子どものころから嗜好性のつきやすいものです。甘味物の摂取をコントロールすることは難しいため、甘味嗜好を満足させながら砂糖の摂取を制限して、肥満やムシ歯のリスクを下げる目的で開発されたのが代用糖です。代用糖というと、以前はパラチノースなど甘味が砂糖の40%程度のものが多かったですが、現在ではアセスルファムKなど甘味度が砂糖の約200倍のものも開発されています。アセスルファムKは、ダイエットコーラやゼロカロリー飲料などに使用されています。ゼロカロリーとかムシ歯にならないなどのうたい文句に油断して多用してしまい、小さいときに甘い物大好き習慣にならないようにしてください。

燃料タンクが小さい

おやつは大人にとっては楽しみやリラックスが主な目的ですね。でも、子どもたちは育ち盛りなのにお腹の容積が小さいので、おやつは三度の食事を補う大切な補助食です。お菓子に限定してしまわず、すぐにエネルギーにできる炭水化物を中心にして、砂糖・塩・油を摂り過ぎないような食物をおやつに選んであげてください。たとえば、おにぎりは手軽でひじき、切干大根、とろろ昆布などいろいろな具材を加えて、ヘルシーでかわいく演出して楽しめますのでオススメです。

サッカーでおいしそうに飲んでいるのは

Jリーグやワールドカップの試合中に、選手たちはゴクゴクなにか飲んでますね。さぞかし、スポーツに良いスペシャルドリンクがあるのでは?とか。なんておいしそうなんだろう!と思っていたアナタ、あれは、ただの「水」です。ジュースはもちろん、スポーツドリンクは、競技場には持ち込み禁止なのです。お茶とお水しか許可されていません。それであんなに元気に走り回れるんですから、私たちが、スポーツドリンクじゃなきゃ困るようなスポーツの場面は、あるでしょうか?

腸内細菌について

唾液は魔法の液体。噛めばわきあがる健康の泉

もしも唾液がなかったら・・・味がわかりません。食べるだけで口の中が傷だらけ。飲み込もうとしたらつまってしまいます。量が減ったら、ムシ歯・歯周病・口臭・免疫低下などなど、口と全身の健康に赤信号です。

唾液の効用

  • 消化作用
  • 潤滑作用
  • 溶解作用
  • 保護作用
  • 体液調節
  • 排泄作用
  • 抗菌作用
  • 浄化作用
  • 緩衝作用
  • 再石灰化
  • 味覚活性
  • 解毒作用
その1
歯の防御因子と攻撃因子

歯を攻撃する因子(アタックパワー)は、細菌、砂糖、細菌が作り出したプラーク・酸・毒素などです。防御因子(ディフェンスパワー)は、歯磨き、フッ素、野菜などの清掃性食品、唾液などです。唾液は心強いディフェンスパワーです。唾液で洗い流す菌の重量は1日に1~4gにもなり、数十億もの細菌が口から取り除かれ、胃液で殺菌されます。唾液は口をしっかり動かすとよく出ます。口をポカンとさせて口呼吸すると、唾液が粘って、汚れがつきやすくなります。

その2
傷をなめる話

唾液の成分には、細菌やウィルスの感染から、からだをまもる大切な物質が多く含まれています。酸をうすめる効果や細菌のえさを洗い流す洗浄効果もあります。ねずみの背中に傷をつけると、複数匹で飼ったほうが単独より傷が早く治ります。
これは仲間が傷をなめて治すからです。ひと口の噛む回数を増やす、口をよく動かすなどで、唾液がよく出るようにしましょう。

その3
唾液線の発達には

唾液を分泌する場所は唾液腺といいます。よく噛める固形食で飼育したネズミと、噛まなくてよい軟食で飼育したネズミの唾液腺の重さを調べたところ、よく噛んでいるネズミの唾液腺のほうが発達していることがわかりました。小児期は、唾液腺が成長しているときですので、よく噛んで食べることで、唾液をたくさん分泌できるようにしましょう。

その4
初期のムシ歯を治す唾液

唾液の中には、歯の成分であるカルシウムやリンが含まれています。歯の表面が、細菌の出す酸で溶かされて、顕微鏡レベルの小さいムシ歯が歯の表層や浅い表層下にできかけたとき、唾液で酸が中和されると、唾液中のカルシウムやリンが小さいムシ歯の穴を埋めてもとのエナメル質の結晶構造と同じ状態に回復してくれるのです。これを再石灰化といいます。お砂糖が1日に何度も口に入ると、口の中が酸性になっている時間が長くなり、歯が溶けやすくしかも修復されにくいので危険です。砂糖の回数を減らし、唾液をよく出す生活習慣をこころがけてください

その5
唾液の解毒作用

よく噛んで唾液と食物が混ざるのとミキサーでドロドロにして飲み込むのでは、どこがちがうのでしょうか?
もし食品に毒性のあるものが含まれていた時、毒を消してくれる力を唾液が持っているのです。カビ毒であるアフラトキシン、肉などのコゲの部分、ニトロソ化合物、タバコのヤニ、食品添加物AF-2、大気汚染物質ベンツピレン、その他の発がん物質に、唾液を加えて毒性を測ると、短時間で著しい解毒効果があることがわかりました。この毒消し作用は、加齢や疲労で低下するそうです。よりしっかりと噛んでほしいですね。

その6
唾液をよく出す食べ物

唾液を良く出す食べ物はどんなものでしょう?
①自然のままの食材
②加工を最小限にした食品
③噛めば噛むほど味が出てくる食品
④水分の少ない食品(フランスパンなど)
⑤皮付きの野菜、果物などがおすすめです。薬剤や加齢による唾液の減少には、①~⑤のほか、酸味のある食品も試してみてください。

その7
唾液で中和

唾液には酸の力を弱める効果があり、唾液緩衝能といいます。多くの炭酸飲料は強い酸性ですし、ムシ歯菌は砂糖から酸を作り出します。これをうすめないと、歯が溶け出すのです。唾液が1㏄あればpH2,3(強い酸性)の1㏄の塩酸をpH6.0(歯の安全な濃度)にできますが、もし混ざりもののない水でうすめた場合、同じ濃度にするのに必要な水の量は1000㏄、つまり唾液の1000倍の量が必要です。

その8
緊張で口がかわくのは

唾液の分泌は、副交感神経(→水分が多いサラサラ唾液)と交感神経(→ネバネバ唾液)の両方の自律神経で調整されています。副交感神経と交感神経は「癒し」と「戦闘」モードをつかさどるともいえます。そのためシーソーのように一方の活動が高まるともう一方は低くなります。リラックス状態では副交感神経が優位になり、サラサラ唾液が多く分泌され、消化を助けるようになっています。ストレスがかかると交感神経が優位になり、ネバネバ唾液が増えて、口がカラカラにかわいた感じになり飲み込みにくさを感じたり、おいしく味わえなかったりします。そのかわり、ネバネバ唾液は、砂利などが口に入ったとき歯肉や粘膜が傷つきにくくし、傷の保護や修復、抗菌効果などを持っています。

その9
唾液の減少と生活習慣

唾液はさまざまな原因で減少してしまいます。
たとえば、唾液腺自体の病気、糖尿病や貧血などの全身疾患、特定の薬剤の影響、女性ホルモンの減少、神経疾患、加齢、生活習慣などの影響をうけます。生活習慣では、喫煙、アルコール、カフェイン、無理なダイエット、水分摂取の低下、ストレス解消が下手、噛む回数が少ないなどが、唾液を少なくしてしまいます。口が乾燥することが多いと感じたら、しっかり口唇を閉じて鼻で呼吸することと、ふだんからよく噛んで食べることをこころがけてください。

その10
唾液はどこから出てくるの?

唾液腺から分泌された唾液の出口は、舌の下と頬の内側中央付近です。この付近の歯は唾液のおかげでムシ歯になりにくいのですが、歯磨きをしないと、唾液に含まれるカルシウム分が沈着して、歯石になってしまいます。下の前歯の内側、上の奥歯の外側は、歯石の付着をふせぐためにしっかり磨いてください。上の前歯の表面は、唾液がまわりにくい場所ですから、ムシ歯の好発部位です。

その11
ドライマウス

唾液は耳の下や舌の下にある唾液腺などから1日に1.5~2.0ℓ分泌されます。この唾液腺に異常がおき、唾液が少なくなるのがドライマウスです。主な原因は、薬の副作用(抗アレルギー剤・降圧剤・抗うつ剤など)が最も多く、涙や唾液が出にくくなるシェーグレン症候群、次いで内科的な病気(糖尿病・腎臓病など)があります。他には、放射線治療の影響やストレスなども唾液を減少させます。ドライマウスの症状は、舌のヒリヒリした痛み、味覚障害、しゃべりにくい、のどの渇きなどで、歯周病やムシ歯の悪化、口臭なども問題です。最近は人工唾液、保湿ジェル、スプレーなどがいろいろ販売されるようになりました。唾液が少ないとよごれが取れにくいことを意識しながら、口を清潔に保ってください。

その12
唾液腺マッサージ

唾液の分泌が少なくなってきた、と感じられた方には、唾液腺マッサージという方法があります。唾液腺を指で押して刺激することで、唾液の分泌をおこすマッサージです。大唾液腺は「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」があります。米粒ほどの大きさの小唾液腺は、口唇や頬の内側の粘膜、口蓋、舌などにたくさんあります。大唾液腺3つを指で押すマッサージをやってみてください。「耳下腺」耳の穴の下斜め前、上の奥歯のあたりの頬を指の腹でやさしくなでます。「顎下腺」下あごの曲がり角の内側を親指で上へ押し上げ、前方に向かって指1本ずつずらして押し上げます。「舌下腺」下あごの前方の一番突き出た所の内側の柔らかい部分を、両手親指をそろえて押し上げます。じわっと唾液がわいてきたら大成功!

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歯周病と全身の病気の関係

糖尿病

歯周病は血糖コントロールを悪化させる要因となり、逆に糖尿病が歯周病を進行させるという相互関係があります。歯周病治療によって糖尿病患者の血糖値が改善したケースが多数報告されています。歯周病の炎症性物質がインスリンの働きを阻害し、血糖コントロールを悪化させることが確認されています。

心血管疾患

歯周病による慢性的な炎症が動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があります。米国で行われた1万人の14年間の追跡調査では、歯周病患者は冠動脈疾患の発症リスクが25%増加することが示されました。
歯周病菌は血管内皮に炎症を引き起こし動脈硬化を促進します。

妊娠合併症

歯周病により早産や低体重児出産のリスクが高まります。歯周病菌が胎盤や羊水から検出されています。アメリカの疫学調査では、歯周病を有する母親の早産・低体重児出産の割合が7倍高くなると報告されています。

認知症

歯周病菌が脳に影響を与え、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める可能性があるとする研究もあります。歯周病菌は脳に到達することがわかっています。そして脳内で炎症を引き起こすことで神経変性を促進することが考えられます。

呼吸器疾患

歯周病菌が気道に入り込むことで、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を引き起こすことがあります。高齢者施設での調査では、口腔ケアの徹底により誤嚥性肺炎の発症率が低下したという報告が多数あります。

関節リウマチ

歯周病菌が免疫反応を活性化し、関節リウマチの症状を悪化させる可能性があります。

がんとの関連

重度の歯周病患者では、がんの発症リスクが最大で24〜28%上昇するという研究結果や、がん発症が33倍になったという研究があります。歯周病は慢性炎症です。慢性的な炎症が、細胞のDNA損傷や異常な増殖を引き起こし、これが発がんリスクを高めます。歯周病菌が産生する毒素が、口腔内や消化器官の細胞に直接作用し、がん化を促進します。口腔がん、食道がん、肺がん、大腸がん、膵臓がんなどでリスクが大きくなることが報告されています。

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タバコと口腔

子どもたちを、タバコの害からまもりたい

タバコ由来の発がん性物質が子どもの唾液、尿、毛髪からも検出されています。受動喫煙による血清ニコチン濃度は子どものほうが悪影響を受けやすいのです。

子どもの歯肉とタバコ

先日、岡山大学小児歯科が学会発表し、新聞やテレビでも取り上げられた調査によると、家庭内で喫煙する人がいる子供と、誰も吸わない家庭の子供では、歯肉の状態に差があることがわかりました。
以前から、副流煙、受動喫煙による血清ニコチン濃度は子供の方が悪影響を受けやすいことや肺疾患などが報告されています。タバコ由来の発がん性物質が子供の唾液、尿、毛髪からも検出されています。お子さんのそばで、タバコを吸わないでください。

乳幼児突然死

喫煙は様々な病気に関係します。ガンはもちろん、呼吸器疾患、消化器疾患などはご存知ですね。最近では、歯周病・骨粗しょう症・婦人科の病気も悪化させることがわかっています。
恐ろしいのは、本人のみならず周囲の人にも害を与えてしまうことですね。子供の場合、親の喫煙で、乳幼児突然死症候群の要因にもなります。誤飲事故も「すいがら」が多数を占めています。同じ部屋でなくても家の中で喫煙している場合、幼児のニコチン血中濃度が非喫煙家庭の10倍になるというのは驚きでしょう?

タバコとアトピー性皮膚炎

タバコの煙は、アトピー性皮膚炎の危険因子です。米国ノースウェスタン大学が、2016年に皮膚分野の国際誌に報告しました。
能動喫煙、受動喫煙のどちらも、また、小児でも成人でもアトピー性皮膚炎との関連があるというものです。煙草には膨大な種類の有害物質含まれていますが、なかでもニコチンや一酸化炭素は血流を悪くするため、酸素や栄養が十分に身体にいきわたらなくなり、免疫機能が低下するため、アトピー性皮膚炎が悪化しやすくなることが考えられます。おそらくほかの有害物質も悪影響を及ぼしているでしょう。

たばこで麻酔がききにくい

たばこを吸ったり、受動喫煙すると痛みに敏感になって、手術の際により多くの麻酔や鎮痛剤が必要になることがわかりました。麻酔量は喫煙者が通常より33%も多く、受動喫煙者で20%多い量が必要で、鎮痛剤は、喫煙者が23%、受動喫煙者で18%多く必要だったそうです。受動喫煙でも影響が大きいことがわかります。たばこを吸うと血行が悪くなり、傷の治りに悪影響を及ぼすことは以前から知られています。
歯科ではインプラントの成功率が喫煙者では極端に低いのです。なかなか治らなくて痛みが多い・・・たばこには良いところがありませんね。

【替え歌】近くでタバコをすわないで

近くでタバコを吸わないで
こどもが好きなら火を消して
あなたのけむりを吸っているのよ
毒のけむりを吸っているの
こどものからだにたまっていくのよ
近くでタバコを吸わないで
近くでタバコを吸わないで
やさしい気持ちをわすれたの
子どもの方が害がおおきいの
髪にも歯ぐきも唾液にも
検出されるのニコチンが
近くでタバコを吸わないで